古典読解問題5
今は昔、唐に、孔子、道を行き給ふに、(あ)八つばかりなる童あひぬ。孔子に問ひ
申すやう、「日の入る所と洛陽と、いづれか遠き。」と。孔子いらへ給ふやう、
「日の入る所は遠し。洛陽は近し。」童の申すやう、「日のいで入る所は見ゆ。
洛陽はまだ見ず。されば日のいづる所は近し。洛陽は遠しと思ふ。」と申し
ければ、孔子、かしこき童なりと感じ(い)給ひける。「孔子にはかく物問ひかくる
人もなきに、かく問ひけるは、(う)ただ者にはあらぬなりけり。」とぞ人いひける。
孔子|中国古代の思想家。
洛陽|中国の地名。
一 (あ)八つばかりなる童あひぬ を現代語訳せよ。
二 (い)給ひける を現代仮名遣いにしてすべてひらがなで書け。
三 童はなぜ日の出るところより洛陽のほうが遠いと言ったのか。
童がそう考えた根拠を答えよ。
四 童が人から(う)ただ者にはあらぬなりけりと言われたのはなぜか。次から最も適切なものを選べ。
ア 鋭い着眼点で大人も気づかない孔子の誤りを指摘したから。
イ 経験に基づく理屈で洛陽の正確な位置を特定して孔子を驚かせたから。
ウ 目上の者に対して不遜な態度で失礼なことを言うから。
エ 孔子に対して自分の考えをしっかり持って問答したから。